前回は、ASDの症状について投稿しました。
ASDの症状について
今回は、ASDの支援方法について投稿したいと思います。
ASDは生まれ持った特性のため、とくに治療方法は存在しません。
それでもいくつかの方法や対策によって生活をしやすくしたり症状を抑えたりすることができます。
本日は、その支援方法を4つご紹介したいと思います。
環境を調整する
自閉スペクトラム症の方は生活をしやすい環境を整えることが重要です。
環境調整とは、ASDの子どもの特性に合わせて環境を調整し、困り事が起きないようにすることをいいます。
なぜ環境調整が必要かというと、感覚が過敏であることや手先が不器用、急な変化が苦手といったことがあるためです。
急な変化や変更が苦手な場合
例えば急な変化に対応するのが難しくパニックになってしまう子どもには、一日の予定を時計のイラストなどを用いて視覚的にわかりやすく伝えます。
そして必要なルールなどは、紙に書いてすぐ理解しやすいように工夫をして、伝えたい事柄は、ポイントを明確にはっきりと伝える、何度も繰り返し言うなどの配慮を行います。
その場の雰囲気を察するのが苦手な場合
また、その場に合わせた振る舞いが苦手な子どもには、仕切りなどを使って場所を明確に区別する方法もあります。
子ども部屋の中に仕切りとして段ボールや看板などに、「遊ぶ場所」「勉強場所」「おもちゃを片付ける場所」と記載して明確に分けることで、子どもが安心してそれぞれの作業を行うことができるようになります。
本人が苦手だと感じる環境を少しでも減らすことは、自閉スペクトラム症を有する子ども特有の症状を緩和することができます。
心理療法
自閉スペクトラム症の症状を改善する方法として、心理療法があります。
心理療法とは、教示や対話、訓練などを通して認知と行動に変容をもたらすことで、精神疾患や心因性疾患の治療や援助、心理的問題の解決、あるいは精神的健康の増進を図ろうとする方法です。
そして心理療法の中で、自閉スペクトラムを改善する方法として認知行動療法があります。
認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:CBT)とは、緊張やストレスなどで凝り固まって狭くなってしまった視野や思考・行動を、自分の力で柔らかくし、自由に考えたり行動したりするのをサポートする方法です。
具体的には、不安感や不快感、緊張・ストレスを抱えた時の状況や自分の行動、その時にとっさに浮かんだ考え(自動思考)を記録する思考記録などが挙げられます。
その他にも、行動活性化という方法があります。
内容は、日々の生活を振り返り無理のない範囲で、
日常的に行う決まった活動
優先的に行う必要のある活動
楽しめる活動、やりがいのある活動
の大きく分けて3つの活動から、優先順位をつけて行っていきます。
この方法では、楽しめる活動とやりがいのある活動を増やしていくことが効果的です。
このように、自分の考え方のくせや行動に着目して、思考や行動パターンを理解することで認知(理解・判断・論理などの知的機能)を調整していきます。
これにより、普段の生活で感じる緊張やストレスを緩和することが可能となります。
薬物療法
根本的な治療薬はありません。
しかし、コミュニケーション障害や強迫観念・固執・執着的といった、一定のものに強いこだわりを見せる症状などは薬で抑えることができます。
そのほかにも、漢方薬を使ってイライラや落ち着きのなさ、興奮や神経過敏などの症状を抑えることできます。
子どもの学齢期に合わせた支援
自閉スペクトラム症の子育て・教育には、よりさまざまな工夫が必要になります。
子育て・教育の支援は、医療機関だけではなく、地域における子育て支援機関や療育機関などでも行われます。
学童期の支援
そして、子どもが家庭や保育園〜幼稚園・学校などで安心して活動でき、さまざまなスキル(コミュニケーション、対人スキル、日常生活スキルなど)を学べるように、その子自身だけではなく、むしろその子の養育に関わる保護者や学校などでの支援を整えていくことが大切です。
そのため必要時には疾患特性や身体機能の専門家である、理学療法士や作業療法士の支援も必要になります。
思春期以降の支援
成長や発達段階によって、その子が抱える課題も異なってきます。
そのため、思春期以降では、自己実現(進路相談や人間関係、仕事や日常生活、余暇活動の選択など)がテーマになってきます。
当事者同士がその人らしく歩めるような支援を提供できるように準備を行い、相談に応じられる基盤として機能することが医療や支援機関、専門職(PT、OT)の役割となります。
まとめ
今回は、ASD者の支援方法についての投稿でした。
ASDは生まれ持った特性のため治療法はありませんが、さまざまな支援方法があります。
環境調整により過ごしやすく活動しやすい空間を作ることができます。
落ち着かない時には、お薬で気持ちを楽にすることができます。
心理療法として、認知行動療法があり自分の行動を振り返ることで自分自身の行動特性を理解して、緊張やストレスを緩和する方法を獲得します。
学齢期に合わせた支援を行い、専門機関や他職種と連携することで、その人に合わせた支援が行えます。
次回は、ASD特有の運動能力についての投稿をしたいと思います。
参考情報
・Neurosci. 2013 May : Physical exercise prevents stress-induced activation of granule neurons and enhances local inhibitory mechanisms in the dentate gyrus
・Marco Lacoboni, Roger P Woods, Marcel Brass,Harold Bekkering, "Cortical mechanisms of human imitation," Science, vol. 186, pp. 2526-2528, 1999.
・Mirella Dapretto, Mari S Davis , Jennifer HPfeifer , Susasn Y Bookheimer, "Understanding emotions in others: mirror neuron dysfunction in children with autism spectrum disorders," Nature neuroscience, vol. 9, pp. 28-30, 2006.
・Najafabadi Mahboubeh Ghayour, Sheikh Mahmoud, Hemayattalab Rasoul, Memari, Amir-Hossein, Aderyani Maryam Rezaii, Hafizi Sina,"The effect of SPARK on social and motor skills of children with autism," Pediatrics and Neonatology, vol. 59, pp. 481-487, 2018.
・Megumi Andoh, Kazuki Shibata, Kazuki Okamoto, Junya Onodera, Kohei Morishita, Yuki Miura, Yuji Ikegaya, Ryuta Koyama, "Exercise reverses behavioral and synaptic abnormalities after maternal inflammation," Cell Reports: 2019年6月4日
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