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自閉スペクトラム症:ASDの運動能力について



前回は、ASDの症状について投稿しました。


ASDの支援について


今回は、ASDの運動能力について投稿したいと思います。





自閉スペクトラム症の運動能力について

自閉スペクトラム症の人は主症状以外にも極端な運動能力の低下を認め、近年は発達性協調運動症:Developmental Coordination Disorder(以下、DCD)が注目されています。


DCDは、自閉症スペクトラム症の約8割に並存しているとされている報告もあります。

 

 

発達性協調運動症とは?


強調性

DCDは、手と足の動きや体を動かすなど、身体の動きをコントロールして行う協調運動を行うことが難しい状態を言います。年相応に、細かい運動や手足を強調させた動作が難しいた

め、日常生活に支障が出てきます。

 

*発達性協調運動障害の例

・物をつかむ、つまむことが苦手

・靴紐を結ぶなど指先の細かい動作が苦手

・はさみや刃物などの道具を使うことが不正確である

・球技や水泳など全身を大きく使う粗大な運動が苦手

・書字に困難が生じている

 

年齢別で変化する症状

DCDの症状は、子ども毎に異なり、年齢とともに変化します。

その症状は、乳幼児期から現れることがあります。

始めはちょっとした運動技術の遅れとして現れることがあります。

 

小さい頃のDCDの症状



・運動発達が遅れている(寝返り、座る、歩くのが遅い)

・細かい手先の作業で苦労さがある(スプーンで食べる、ブロックを積み上げる)

・バランスの調整が難しい(転びやすい、物をよく落とす)

 

運動発達に影響を与える症状

・細かい運動発達(握力が弱い、絵を描くのが難しい、ボタンを止めるのに困難さがある)

・大きな運動発達(走る、ジャンプ、物を投げるなどの運動が苦手、不器用)

 

DCD初期症状と他の発達課題との関連性

・言語発達の遅れ

運動発達が遅れている場合、言語発達にも遅れが認められることがある 

・社会性

運動スキルの遅れは、他者と協力する遊びやお友達との進呈的な活動に参加することを難しくすることがある 

・注意力の問題

DCDのある子供は、時折、注意欠陥多動性障害(ADHD)の兆候を示すことがある

 

小さい頃の支援

さまざまな兆候が、小さい頃から認められる場合には、発達の専門家に相談することを検討した方が良いと考えます。

早期の認識と介入は、その子の理解に繋がります。

そして、子供が将来的に困難を経験するリスクを軽減し、適応していくスキル獲得・発展に重要です。

 

学齢期のDCDの症状



学齢期のDCDは、学習、社会的、情緒的な側面で影響を及ぼす可能性があります。

 

学齢期の症状

・細かい運動技術が困難(書く、ボタンを留める、紐結びが難しい)

・粗大運動が困難(バランス調整、走る、跳ぶ、ボールを蹴るなど)

・運動学習が困難(新しい動作、スポーツを覚えるのが難しいなど)

 

学習に影響を与えうる症状

・書取りや絵を描くのが難しい(学校での勉強やテストに影響を与える)

・新しい運動技術を獲得するのが難しい(体育の授業やスポーツの場面で影響を及ぼす)

 

社会的・情緒的な影響

・自己評価が低い

他者と比較して、自分の能力が低いことを感じてしまい、自己肯定感が低下する可能性がある

 

・社会的孤立

他の子供達と遊ぶ、スポーツを通して交流するのが難しいと考えてしまうことで、孤立感を覚える可能性がある

 

・情緒的な困難

DCDの症状が日常生活に及ぼす影響によるストレスを抱え不安や抑うつの原因となる可能性がある

 

学齢期の支援

DCDの症状とそれが与える影響は子供ひとりひとり違います。

そのため、それぞれの子どもの困難さやニーズを理解し、適切な支援を提供することが重要になります。

 

 

思春期以降のDCDの症状



思春期以降のDCDの症状は成長と共に変化し新たな課題をもたらす可能性があります。

この時期は、自己管理能力が重要です。

そして、進学や就職においても影響を及ぼす可能性があります。

 

思春期以降の症状

・運動スキルの困難

成長と共に身体が大きくなるため、新たな運動スキルの習得た体のバランス調整などが難しくなる


・学習の困難さ

高校生での教育や就職先でのプログラム、仕事など学齢期よりも高度な学習スキルが求められる

 

自己管理能力の課題

時間の管理やスケジュールを組む、タスク管理などで困難さが現れる可能性が現れる可能性があります。


・時間管理

適切に予定を立てて、スケジュールに間に合うような時間管理が難しい


・タスク管理

複数のタスクを同時に進行する、大きな課題を、順序立てる・優先順位を考えて実行することが難しい


・組織化

物事や思考を整理する、順序立てるのが難しい

 

進学や就職への影響

・高校生活場面

授業のノートを書く、科学の実験を行う、絵画を描くなどが難しい

 

・仕事の場面

仕事で必要な技術やスキル獲得が難しい、時間を要する、PC操作が苦手

 

思春期以降の支援

適切なサポートと自己戦略があれば、これらの課題を克服することも可能だと考えます。

そのためには、一人一人の個性やニーズ、課題を理解して対策を行うことが必要になります。

 

DCDによる困難さは、特に学校教育のような集団生活で問題になりやすく、うつや不安障害などの二次障害の原因となると懸念されています。

そのため、必要時には、専門機関や専門家による支援を検討します。

 

専門機関の支援



幼少期から思春期にかけての運動異常は細かな指先の動作や、力を発揮する、バランスを保持するなど多彩であることから、個人差もかなり大きいことが予測されます。

そのため、運動指導の(理学療法士、作業療法士)の介入や精度の高い機器などを使用した評価が望ましいと考えられます。

 

また、進学、就職など社会に出ていく上で自己の健康管理意識を高めていくと共に、多くの生徒が苦手意識を感じている運動について正しい知識や管理方法を修得していく事は重要になります。 


まとめ


ASDにおける運動の困難さはDCD(発達性協調運動症)が関連していることが多い

可能性があります。


そのため、成長段階別に合わせたDCDに対する支援が必要です。


また、専門機関の支援も検討しその子の得意・不得意、成長時期別の課題への対応が必要になります。


次回は、ASD・DCDの症状緩和と運動の関係性について報告している研究に関する投稿をしたいと思います。



参考情報


 




・Marco Lacoboni, Roger P Woods, Marcel Brass,Harold Bekkering, "Cortical mechanisms of human imitation," Science, vol. 186, pp. 2526-2528, 1999.

 

・Mirella Dapretto, Mari S Davis , Jennifer HPfeifer , Susasn Y Bookheimer, "Understanding emotions in others: mirror neuron dysfunction in children with autism spectrum disorders," Nature neuroscience, vol. 9, pp. 28-30, 2006.

 

 

・Najafabadi Mahboubeh Ghayour, Sheikh Mahmoud, Hemayattalab Rasoul, Memari, Amir-Hossein, Aderyani Maryam Rezaii, Hafizi Sina,"The effect of SPARK on social and motor skills of children with autism," Pediatrics and Neonatology, vol. 59, pp. 481-487, 2018.

 

 

 

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