筋トレは、なんとなくやることでは効果が現れにくいです。
そのため、トレーニングに関する知識を元に筋トレをする必要があります。
今回は、筋力トレーニングの効果を最大化する「トレーニングボリューム」について投稿します。
トレーニング量(ボリューム)とは
トレーニング量 (ボリューム)は、一定時間内に行われる運動の量を意味しています。
適切な表現としては、セット数×反復回数×負荷から算出される総負荷量となります。
1セッション当たりのトレーニング量が一定の場合、トレーニング頻度を増加させれば週当たりの総負荷量を最大限に増加させることができます。
そして、1回のトレーニングで実施するセット数(総反復回数)の増加によってもトレーニング量を大幅に増加させることができます。
総負荷量とは関係なく、筋肥大を目的としたレジスタンストレーニング量は「セットボリューム」で表現されることもあります。
これは、1週間間以内にトレーニングを行った筋肉に対して実施したセット数として定義されています。
この方法で6~20回の反復回数でトレーニングを限界まで行うことで、他のすべての変数が一定(変数 = 種目、回数や重量、セット数、頻度など)である場合、レジスタンストレーニング量を定量化するために有効であることが報告されています。
トレーニングボリュームによる下肢への影響
Hanssenらの研究では1週間に18セットの膝伸展運動を実施すると、6セットと比較してはるかに筋衛星細胞が増加したことを報告しています。
*筋衛生細胞:骨格筋の再性能を担う細胞。筋繊維周辺に存在し、筋細胞が分化・増殖して筋肉組織を再生する。筋肥大における作用は、既存の筋繊維に核を供給して筋細胞の分裂能力を維持して、筋の新しい収縮タンパクの合成能力を高める。
下半身と同様のトレーニング量の差があったにもかかわらず、上半身の筋組織に有意差はみられなかったことから、ボリュームによる筋肥大への影響は下肢の筋組織に顕著に現れることが示唆されました。
これらの知見は、同じコホート研究から、 上半身では有意差がみられなかったものの 下半身においては 1 セットのプロトコルよりも 複 数 セッ トのプロトコルで 有意 に 筋肥大が起きたと報告があります。(上半身7% 対 下半身11%)
そのため、下半身のトレーニングにおいて、高ボリュームでトレーニングを行える人は、4〜5セット実施したほうが、筋肥大にはより効果的だと考えられます。
同化反応(タンパク質合成を促進して筋の成長を促す)を最大化するためには、より多くのトレーニング量が必要であるという説得力のあるエビデンス(根拠)があります。
この同化反応とトレーニング量の関係は複数のエビデンスから実証されています。
そして、さまざまな研究から、
「レジスタンストレーニングプログラムのうち1セットのプロトコルよりも複数セットのプロトコルの方が、細胞内シグナル伝達と筋タンパク合成により大きいポジティブな効果を与える」
ことが示されています。(出典:骨格筋肥大のサイエンスとトレーニングへの応用)
トレーニング・ボリューム・セット数に関する研究報告
2007年に行われたWernbomらによるシステマティックレビューにおいて、
総セット数に関して、セッション当たり4~6セットで筋肥大の増加がピークに達したが(0.24%/日の筋横断面積の増加)、3~3.5セットと9 セット以上の実施ではそれ以下の反応が認められました。
(それぞれ3~3.5セット 0.17%/日,9セット以上の実施0.18%/日の増加)
筋断面積の増加の割合
4〜6セット 0.24% ← 1番筋肉の増加率が高い!!
3〜3.5セット 0.17%
9セット以上 0.18%
さらに 最近、BradSchoenfeldのグループが行ったメタアナリシスでは,採用基準を満たした15の研究から蓄積されたデータを定量化し、高ボリュームのレジスタンストレーニングと低ボリュームのトレーニングを比較したところ、高ボリュームのトレーニングの方が、筋肥大は有意に大きいことを見出しています。
トレーニング量を週当たり5セット未満、5~9セット、10セット以上、に階層化すると、量依存の関係(量が増えるほど効果が高い可能性が増すこと)が認められました。
トレーニング量が多いほど筋量の増加が大きいことが示され、その増加率が階層ごとに増加したことがわかっています。(それぞれ 筋量増加率 5.4%、6.6%、6.6%)。
1週間のセット数と筋肉増加率
5セット未満、5.4%
5~9セット、6.6% ← 5セット以上で筋肉の増加率が高い
10セット以上、6.6% ← 5セット以上で筋肉の増加率が高いがオーバーワークの可能性あり(オーバーワークについては後で出てきます)
これらの知見を総合すると、トレーニング量が筋肥大の主な要因であることがわかります。
しかし、より多いトレーニング量(高ボリューム)の効果を検討したデータが不足しているため、週10セットより多いトレーニングを実施した場合にさらなる筋肥大が起こるかどうか、もしそのような効果があるとしてどの時点で閾値に達するのかについては、判断できないようです。
量依存の反応(量が増えるほど効果が高い可能性が増すこと)のエビデンス(根拠)はありますが、ある一定のトレーニング量を超えるとそれ以上筋肥大が増大しない限界があるようです。
これは、トレーニング量と筋肥大の関係U字曲線にしたがうと想定され、特定のトレーニング負荷量で筋肥大がピークに達し、この点を超えると筋肥大が損なわれる可能性が考えられます。
いわゆるオーバートレーニングです。
次回は、この「オーバートレーニング」について投稿したいと思います。
参考情報
・パワーズ運動生理学 2020年 スコット K .パワーズほか
・骨格筋肥大のサイエンスとトレーニングへの応用 2021年 Brad Schoenfeld.
・筋肉の機能・性質パーフェクト事典 2020年 石井 直方
・SCIENCE of STRENGTH TRAINING 筋トレの化学 2021年 オースティンカレント
・e-ヘルスネット
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